「サンドブラストよりも、もっとパワフルな下地処理方法はないだろうか?」
「厚い黒皮(ミルスケール)や、鋳物の砂を、効率よく除去したい…」
大規模な鉄鋼加工や、鋳造品の製造現場で、より高いレベルの表面処理を求めているあなたなら、一度は「ショットブラスト」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
しかし、その強力なイメージとは裏腹に、
「一体どんな仕組みなんだろう?」
「よく聞くサンドブラストとは、何が違うのか?」
「導入する上で、何か知っておくべきデメリットはないのか?」
といった、具体的な情報が分からず、検討に踏み切れないでいるのではないでしょうか。
この記事では、ショットブラストの基本原理から、サンドブラストとの明確な違い、メリット、そして他ではあまり語られない重大なデメリットまで、専門家が徹底的に解説します。
さらに、そのデメリットを根本から解決する、次世代の代替技術までご紹介します。
ショットブラストとは?
ショットブラストとは、表面処理技術の一つです。
「ブラスト」とは、研磨材(砂や小さな金属粒など)を対象物に高速で吹き付ける(投射する)加工法を指します。
その中でもショットブラストは、「インペラ」と呼ばれる羽根車を高速回転させ、その遠心力によって研磨材を投射するのが最大の特徴です。
この強力なパワーにより、金属表面のサビや古い塗膜、汚れなどを効率的に除去・清掃します。
インペラ(羽根車)の遠心力で研磨材を投射する仕組み
ショットブラストの心臓部は「インペラ(羽根車)」です。
- まず、研磨材(ショットと呼ばれることが多い)がインペラの中心部に供給されます。
- モーターによってインペラが高速回転(毎分数千回転)します。
- 研磨材は、インペラの羽根に沿って強力な遠心力で外側へと加速されます。
- 加速された研磨材は、インペラの出口から高速度で投射され、対象物(ワーク)に衝突します。
この衝突エネルギーによって、ワーク表面のサビや塗膜が剥ぎ取られます。
圧縮空気を使わないため、広範囲にわたって非常に強力な研磨力を発揮できるのが、この方式の強みです。
主な用途:サビ取り・塗装剥離・下地処理(梨地)
ショットブラストの強力な研磨力は、以下のような多様な用途で活用されています。
- サビ取り(スケール除去)
鋼材や鋳造品の表面に発生した頑固なサビ(黒皮)や酸化スケールを強力に除去します。 - 塗装剥離
古くなった塗装や、焼付け塗装などの強固な塗膜を剥がします。 - 下地処理(梨地加工)
塗装やメッキ、溶射などの前処理として使用されます。
表面を意図的に荒らし、微細な凹凸(梨地=梨の皮のようなザラザラした面)を作ることで、塗料やメッキの密着性(アンカー効果)を劇的に向上させます。 - バリ取り・ピーニング
鋳造品や鍛造品のバリ(不要な突起)を除去したり、表面に残留応力を与えて強度を高める「ショットピーニング」という加工にも使われます。
サンドブラストとの決定的な違い

ショットブラストと非常によく似た言葉に「サンドブラスト」があります。
どちらも研磨材を吹き付ける技術ですが、その「原理」と「能力」には決定的な違いがあり、用途も異なります。
投射方式(遠心力 vs 圧縮空気)の違い
最大の違いは、研磨材を投射する「動力源」です。
- ショットブラスト
上述の通り、インペラ(羽根車)の遠心力で研磨材を投射します。
動力は主に電気モーターです。 - サンドブラスト
圧縮空気(コンプレッサーエア)の力で研磨材をノズルから噴射します。
この動力源の違いが、加工能力や適した用途の差につながります。
加工能力と研磨材(ショット vs サンド)
ショットブラストは、インペラの回転により大量の研磨材を広範囲に、かつ連続的に投射できるため、非常に高い処理能力(研磨力)を持ちます。
橋梁の部材や船舶、自動車の足回り部品など、大型の対象物や大量生産品の処理を得意とします。
使用する研磨材は「スチールショット」と呼ばれる金属の粒が主流で、比較的重く、強力な打撃力を持ちます。
一方、サンドブラストは、圧縮空気で研磨材を噴射するため、ノズルで狙った箇所を局所的に、あるいは繊細に加工するのに適しています。
加工能力はショットブラストに劣りますが、手持ち式のガン(ブラストガン)で作業できるため、小回りが利きます。
使用する研磨材は「サンド(砂)」の名の通り、かつては珪砂(けいさ)が使われましたが、現在はアルミナやガーネット、ガラスビーズなど多岐にわたります。
一目でわかる比較表(ショットブラスト vs サンドブラスト)
両者の違いを理解するために、主要な項目を比較表にまとめます。
| 比較項目 | ショットブラスト | サンドブラスト |
|---|---|---|
| 投射原理 | インペラの遠心力 | 圧縮空気 |
| 動力源 | 電気モーター | エアコンプレッサー |
| 加工能力 | 非常に高い(広範囲・大量) | 中~高(局所的・繊細) |
| 主な研磨材 | スチールショット、スチールグリット(金属系) | 砂、アルミナ、ガラスビーズ(非金属系が多い) |
| 主な用途 | 大量生産品、大型構造物のサビ取り・下地処理 | 小~中規模のサビ取り、塗装剥離、梨地加工、デザイン加工 |
| 設備規模 | 大型になりがち | 比較的小型~大型まで様々 |
| 呼称 | (そのまま)ショットブラスト | エアブラスト、グリットブラストとも呼ばれる |
ショットブラスト導入のメリットとデメリット
ショットブラストは非常に強力で効率的な工法ですが、他の技術と同様に、メリットと表裏一体のデメリット(課題)が存在します。
特に現場の環境改善やコストダウンを目的として導入を検討する場合、デメリット側を深く理解しておくことが失敗しないための鍵となります。
メリット:高い研磨能力と均一な仕上がり品質
ショットブラストの最大のメリットは、その圧倒的な処理能力です。
グラインダーでの手作業(ケレン作業)や、薬品に浸漬する方法と比較して、処理時間が劇的に短縮されます。
また、手作業と違って研磨材が均一に投射されるため、品質のバラつきが少なく、安定した均一な仕上がり(例: 均一な梨地)を得意とします。
デメリット1:深刻な粉じん・騒音による作業環境の悪化
これが導入後に最も問題となりやすい課題です。
ショットブラストは、研磨材(ショット)と、剥ぎ取られたサビや塗膜(ダスト)が高速で飛び交う工法です。
強力な研磨力を持つ反面、大量の粉じんが発生し、インペラの回転音や研磨材の衝突音により極めて大きな騒音(多くの場合100dBを超える)が発生します。
もし現在、グラインダー作業の「粉じん」や「騒音」を課題として代替案を探している場合、ショットブラストを導入しても、課題の種類が変わるだけで、根本的な解決にならない可能性があります。
デメリット2:研磨材の消費と産業廃棄物の処理コスト
ショットブラストは研磨材を循環させて再利用しますが、研磨材自体も衝突によって摩耗・破砕していきます。
そのため、研磨材の定期的な補充コスト(ランニングコスト)がかかります。
さらに、使用済みの研磨材と、集じん機(後述)で回収されたサビや塗膜の粉じん(ダスト)は、産業廃棄物として適切に処理しなければなりません。
この廃棄コストも継続的に発生する負担となります。
デメリット3:母材へのダメージ(削りすぎ・変形)のリスク
ショットブラストは「削る(研磨する)」工法です。
サビや塗膜だけを狙い撃つことはできず、対象物(母材)の表面も必ず削り取ります。
これにより、薄物のワーク(対象物)では変形や歪みが生じるリスクがあります。
また、必要以上に研磨してしまい、母材が痩せて(薄くなって)しまう「削りすぎ」の懸念も常につきまといます。
デメリット4:大規模な集じん設備と高いランニングコスト
デメリット1で挙げた「粉じん」を処理するため、ショットブラスト機には必ず大規模な「集じん機(集塵機)」が必要不可欠です。
この集じん機は非常に大型で、設置には広大なスペースを要します。
さらに、インペラを回すモーターと集じん機を動かすブロワー(送風機)は大量の電力を消費するため、ランニングコスト(電気代)も高額になりがちです。
主要な表面処理工法との比較
ショットブラストの課題が見えてきたところで、現在あなたが使用している可能性のある「グラインダー研磨」や「薬品洗浄」と比較してみましょう。
どの工法が自社の課題解決に最適か、客観的に評価します。
比較表:ショットブラスト vs グラインダー vs 薬品洗浄
| 比較項目 | ショットブラスト | グラインダー研磨 | 薬品洗浄(酸洗い等) |
|---|---|---|---|
| 処理効率 | ◎(非常に速い) | △(遅い・人による) | ○(浸漬時間による) |
| 品質安定性 | ◎(均一) | ×(作業者依存) | ○(均一) |
| 作業環境 | ×(深刻な粉じん・騒音) | ×(粉じん・騒音・振動) | △(臭気・局所排気) |
| 廃棄物 | △(研磨材・粉じん) | △(研磨ディスク・粉じん) | ×(廃液・スラッジ) |
| 母材ダメージ | △(削りすぎ・変形リスク) | △(削りすぎ・ムラ) | △(過処理・水素脆性) |
| 導入/運用 | △(設備大・電力大) | ◎(手軽・安い) | △(薬液管理・廃液処理) |
既存工法に共通する課題
この比較表から見えてくる重要な事実があります。
それは、ショットブラストを含め、既存の主要な表面処理工法は、形は違えど「何かしらの課題」を抱えているということです。
- グラインダーは、手軽ですが「粉じん・騒音・振動」による作業者への負担が極めて大きく、効率も品質も安定しません。
- 薬品洗浄は、粉じんや騒音はありませんが、「廃液処理」という環境負荷とコストの問題、そして薬液管理の手間(工数)が常につきまといます。
- そしてショットブラストは、効率と品質は解決できますが、結局「粉じん・騒音」という作業環境の問題と、「廃棄物・高いランニングコスト」という環境負荷・コストの問題からは逃れられないのです。
もしあなたが「粉じん・騒音・廃棄物コスト」のすべてを解決したいと考えているなら、これらの工法は最適解ではないかもしれません。
ショットブラストマシンの主な種類と研磨材
ここで一度、ショットブラストの導入を具体的に検討する場合に必要な、マシンの種類と研磨材の基礎知識を解説します。
どのような対象物を処理したいかによって、選ぶべきマシンが変わります。
装置の種類(タンブラー式・テーブル式・ハンガー式)
ショットブラストマシンには様々なタイプがありますが、代表的な3つを紹介します。
タンブラー式ショットブラスト
バレル(樽)状のドラムやエプロン(ゴム製ベルト)を回転させ、中の加工物(ボルト、ナット、小物部品など)を攪拌しながらショットを投射します。
小物部品の大量処理に適しています。
テーブル式ショットブラスト
回転するターンテーブルの上に加工物を載せて処理します。
平物や、片面だけを処理したい場合、あるいは大型で複雑な形状のものの処理に適しています。
ハンガー式ショットブラスト
加工物をハンガーに吊り下げ、マシン内で自転させながらショットを投射します。
自動車部品や大型の鋳物など、吊り下げ可能な複雑な形状のものの処理に使われます。
研磨材の種類(スチールショット・スチールグリット)
投射する研磨材も、目的によって使い分けられます。
- スチールショット
丸い粒状の研磨材です。
表面を叩く(ピーニング)効果が強く、サビ取りや下地処理のほか、表面の強度を上げるピーニング処理にも使われます。 - スチールグリット
ショットを砕いたような、角張った(角(エッジ)のある)研磨材です。
表面を削る(切削する)効果が強く、より強力なサビ取りや塗装剥離、深い梨地(アンカーパターン)が必要な場合に適しています。
ショットブラストの課題を根本解決する次世代技術「レーザークリーナー」

これまで見てきたように、ショットブラストは効率的な工法である一方、「粉じん」「騒音」「廃棄物」「母材ダメージ」という4つの大きな課題を抱えています。
そして、これらの課題はグラインダーや薬品洗浄にも共通する、業界の「当たり前」でした。
もし、これらの課題を「すべて」解決できる第4の選択肢があるとしたら、どうでしょうか?
それこそが、私たちが提案する「レーザークリーナー」という次世代技術です。
粉じん・廃棄物・騒音ほぼゼロを実現するレーザークリーナー
レーザークリーナーは、高出力のレーザー光を対象物に照射する技術です。
最大の特徴は、「非接触」であり、「対象物(母材)をほとんど傷つけず、サビや塗膜、油膜だけを除去できる」点にあります。
レーザー光は、サビや塗膜などの異物(除去対象)には瞬時に吸収され、それらを蒸発・昇華(プラズマ化)させます。
一方で、母材である金属表面ではレーザー光は反射されるため、熱影響やダメージをほとんど与えません。
これにより、従来の工法が抱えていた課題が根本的に解決されます。
粉じん・廃棄物の劇的削減
ショットブラストやグラインダーと異なり、研磨材(メディア)を一切使用しません。
そのため、使用済みの研磨材が産業廃棄物として大量に発生する問題はなくなります。
もちろん、除去したサビや塗膜自体は粉塵として回収されるため処理が必要ですが、ブラスト工法のように大量の研磨材と混ざることがないため、廃棄物の総量は圧倒的に少なくなります。
これにより廃棄コストと作業環境が劇的に改善されます。
騒音問題の解消
ショットブラストのインペラ回転音や、グラインダーの研磨音のような、100dBを超えるような轟音は一切発生しません。
レーザー発振器や冷却ファンの稼働音はありますが、作業者の耳を痛めるような騒音レベルではなく、比較的静かな環境で作業が可能です。
母材ダメージの最小化
母材を「削る」のではなく、汚れだけを「蒸発させる」工法のため、ショットブラストで懸念された「削りすぎ」や薄物ワークの「変形」といったリスクを最小限に抑えられます。
設備・コスト
大規模な集じん設備やコンプレッサーは不要です。
必要なのは電源(電力)のみで、ランニングコスト(研磨材・廃棄コスト)を劇的に削減できます。
ULT LASERの優位性(国内開発・防衛省採用の信頼性)
レーザークリーナーは海外製も多く出回っていますが、私たちが提供する「ULT LASER」は、国内での自社開発・国内生産にこだわっています。
日本の厳しい製造現場の要求に応える高品質・高信頼性を実現し、万が一の際のアフターサポートも迅速です。
その安全性と信頼性は、防衛省に正式採用されていることからも証明されています。
デリケートな航空機や艦船の保守において、母材をほとんど傷つけずに精密なクリーニングが求められる現場で、ULT LASERは選ばれています。
導入事例(ショットブラスト・グラインダーからの移行)
実際に、ショットブラストやグラインダーが抱える課題を解決するために、ULT LASERを導入されたお客様が多数いらっしゃいます。
ある製造業の現場では、大型部品のサビ取りにショットブラストを使用していましたが、激しい稼働音による騒音問題に加え、研磨材の交換・廃棄コストと集じん機のメンテナンス工数に悩まされていました。
レーザークリーナー導入後は、騒音が解消されたことで作業環境が劇的に改善し、ランニングコストと工数も大幅に削減されました。
また、別の現場ではグラインダーによる手作業のケレンを行っていましたが、こちらも騒音と粉じんによる作業者負担、そして作業者による品質のバラつきが問題でした。
レーザークリーナー導入後は、作業環境がクリーンになっただけでなく、誰が作業しても均一な仕上がり品質を達成できるようになりました。
▶ULT LASERの使用・導入実績はコチラ
実機デモで見る除去能力と作業効率
「本当にレーザーで頑固なサビが取れるのか?」
「グラインダーより時間がかかるのではないか?」
「ウチの現場の、この特殊な汚れにも対応できるのか?」
そう思われるかもしれません。
その疑問を解消する最善の方法は、あなたの目で直接確かめていただくことです。
私たちは、あなたの現場の課題(ワーク)をお預かりし、実際にレーザーを照射する「実機デモ」を随時開催しています。
ショットブラストやグラインダーと比較して、どれほどの除去能力と作業効率があるのか、そして作業環境がどれほどクリーンになるのか、ぜひご自身の目で体験してください。
まとめ
今回は、ショットブラストの原理からサンドブラストとの違い、メリット、そして導入検討者が見落としてはいけない4つの重要なデメリット(課題)までを解説しました。
チェックポイント
- ショットブラストは、圧倒的な研磨能力を持つ、大規模処理に適した工法である。
- しかし、粉塵、騒音、母材へのダメージ、大規模な設備といった、無視できないデメリットも抱えている。
- これらのデメリットを根本から解決する選択肢として、レーザークリーナーという、よりクリーンで高品質な技術が存在する。
ショットブラストが最適な現場も、もちろん数多く存在します。
特に、大量のワークを高速で処理したい場合には、ショットブラストが依然として強力な選択肢です。
一方で、もしあなたが、現場が抱える「環境・コスト・作業者負担」といった課題を根本から解決したい、あるいは精密な仕上がりを求めているとお考えなら、第4の選択肢である「レーザークリーナー」がその答えになるかもしれません。
「大量処理はショットブラスト、精密・環境対策はレーザー」といったように、目的に応じて工法を使い分ける視点も重要です。
まずは、あなたの現場の課題を解決できる可能性があるかどうか、お気軽にご相談いただき、実機デモでその真価をお確かめください。