高性能なレーザー機器の導入は、生産性を飛躍させる大きなチャンスですが、その一方で、「安全管理体制の構築」という、避けては通れない大きな責任も伴います。
特に、最も危険度が高い「クラス4」となると、一体どこから手をつければ良いのか、途方に暮れてしまうことも少なくありません。
この記事では、レーザークラスの基本から、法律で定められたクラス4の具体的な安全対策、そして必要な体制構築の進め方までを、専門家の視点から網羅的に、そして分かりやすく解説します。
レーザークラスとは?安全規格の基本を理解
この章では、まず「レーザークラス」という言葉の基本的な意味と、なぜこのような分類が必要なのか、その背景にある法律や規格について解説します。
ここを理解することが、適切な安全対策を講じるための第一歩です。
レーザーの危険性とクラス分けの目的
レーザー光は、私たちの身近にある太陽光や照明の光とは異なり、非常に高いエネルギーを一点に集中させることができます。
そのため、不用意に目や皮膚に照射されると、失明や火傷といった、取り返しのつかない重大な障害を引き起こす可能性があります。
そこで、すべてのレーザー製品は、その危険度の高さに応じて、国際的な規格に基づいてクラス分けされています。
これが「レーザークラス」です。
このクラス分けの最大の目的は、製品の危険度を誰もが一目でわかるようにし、そのクラスに応じた適切な安全対策を講じることで、使用者をレーザーの危険から守ることにあります。
レーザー光が持つ特殊な性質と強力なエネルギーについては、『レーザーの仕組み』の記事で詳しく解説しています。
根拠となる法律(労働安全衛生法)とJIS規格
日本国内におけるレーザークラスの分類は、JIS C 6802「レーザ製品の安全基準」という工業規格で定められています。これは、国際規格であるIEC 60825-1に準拠したものです。
そして、事業者が従業員をレーザーの危険から守るために講ずべき具体的な措置は、労働安全衛生法および、それに基づく「レーザー光線による障害防止対策要綱」によって定められています。
特に、後ほど詳しく解説する「クラス3B」および「クラス4」のレーザー機器を使用する事業者は、この要綱に定められた安全対策を講じる義務があります。
レーザークラス全区分の危険性と具体例
それでは、具体的に各クラスがどの程度の危険性を持ち、どのような製品が該当するのかを見ていきましょう。クラスの数字が大きくなるほど、危険性が高まります。
一目でわかるレーザークラス分類比較表
| クラス | 危険性のレベル | 主な対策 | 身近な製品例 |
|---|---|---|---|
| クラス1 | 安全 合理的に予見可能な運転条件下で安全。 | 特になし | CD/DVDプレーヤー、レーザープリンター |
| クラス2 | 低出力可視光 まばたき反射で目が保護されるレベル。 | ビームを意図的にのぞき込まない | バーコードリーダー、一部のレーザーポインター |
| クラス3R | 中出力 直接のぞき込むと危険。リスクはクラス2より高い。 | 直接のぞき込まない、光学機器で集光しない | 測量機器、一部の高性能レーザーポインター |
| クラス3B | 高出力 直接光・反射光ともに危険。 皮膚への障害リスクあり。 | 保護メガネ着用必須、管理区域の設定 | 研究用レーザー、工業用加工機、医療用レーザー |
| クラス4 | 最高出力 直接光・反射光・拡散反射光すべてが危険。 火災リスクあり。 | 厳格な管理体制が必須 | 高出力レーザークリーナー、金属溶接・切断機 |
クラス1からクラス3Rまでの概要
クラス1は、通常の使用ではレーザー光が外部に漏れない構造になっているなど、基本的に安全なクラスです。
クラス2は、バーコードリーダーなど身近な製品で使われますが、意図的に光を見続けることは危険です。
クラス3Rはそれよりも危険度が高く、注意が必要です。これらは主に低出力の可視光レーザーが該当します。
特に厳重な管理を要するクラス4
特に、ファイバーレーザー技術を用いた高出力のレーザークリーナーや加工機は、その多くがクラス4に分類されます。
クラス4は、ビームが直接目に入ることはもちろん、壁や加工対象物に当たって乱反射した「拡散反射光」ですら、目や皮膚に障害を与える可能性がある、最も危険なクラスです。
また、照射された対象物が発火し、火災を引き起こすリスクもあります。
そのため、クラス4レーザー機器を導入する事業者は、労働安全衛生法に基づき、極めて厳格な安全管理体制を構築する義務があります。
クラス4レーザー導入時に事業者が講ずべき安全対策

では、クラス4レーザーを導入する際に、法律(労働安全衛生法に基づく通達)が事業者に求めている具体的な安全対策とは何でしょうか。
ここでは、必ず実施しなければならない5つの重要項目を解説します。
1. レーザー機器取扱技術者(安全管理者)の選任
事業者は、レーザー機器の安全な運用を管理・監督する責任者として「レーザー機器取扱技術者」を選任しなければなりません。
この担当者は、レーザーの危険性を熟知し、作業計画の策定や、安全設備の点検、作業者への指導など、安全管理全般を統括します。
2. レーザー管理区域の設定と標識の掲示
クラス4レーザーの光が、関係者以外のいる場所に漏れないよう、遮光カーテンやパネルなどで作業場所を完全に隔離し、「レーザー管理区域」として設定する必要があります。
出入り口には、レーザー使用中であることが一目でわかる警告標識を掲示し、入室制限を行わなければなりません。
3. 遮光壁やインターロックなど保護設備の設置
レーザー光が管理区域の外に漏れないように、不燃性または難燃性の材料でできた遮光壁やパネルで作業場を囲う必要があります。
また、管理区域のドアや遮光壁の扉が開いた際には、自動的にレーザーの発振が停止する「インターロック」システムを設置することが強く推奨されています。
4. 保護具(保護メガネ)の選定と着用義務
管理区域内で作業するすべての従業員は、使用するレーザーの波長と出力に対応した、適切な「レーザー保護メガネ」を必ず着用しなければなりません。
保護メガネは、使用するレーザーの波長と出力(OD値)に対応したものを選定する必要があります。不適切な保護メガネは、重大な目の障害に繋がるため、選定は極めて重要です。
5. 作業者に対する特別教育の実施
事業者は、レーザー業務に従事する作業者に対し、レーザーの危険性、安全な取り扱い方法、緊急時の対応などについて、法律で定められた「安全衛生のための特別教育」を実施する義務があります。
これにより、作業者一人ひとりの安全意識と知識を高め、ヒューマンエラーによる事故を防止します。
安全体制の構築は専門家への相談が近道
ここまでお読みいただき、クラス4レーザーの導入には、法律に基づいた多岐にわたる安全対策が不可欠であることをご理解いただけたかと思います。
そして同時に、「これを全て自社だけで、間違いなく実行できるだろうか?」という、新たな不安を感じられたかもしれません。
複雑な法規と規格の自己解釈リスク
労働安全衛生法やJIS規格は、専門的な知識がなければ正しく解釈するのが難しい部分も少なくありません。
もし、解釈を間違えたり、対策に漏れがあったりした場合、それは単なる「知らなかった」では済まされず、法的な罰則の対象となるだけでなく、何よりも従業員を重大な事故のリスクに晒すことになります。
安全対策にかかるコストを抑えようとして、自己流の対策を行ってしまうことは、結果的に最も高くつく失敗になりかねません。
オプティレーザーソリューションズが提供する導入から運用までのトータル安全サポート

安全体制の構築は、装置の性能を知り尽くし、関連法規にも精通した専門家へ相談することが、最も確実で、結果的に効率的な近道です。
お客様が安心して、かつ最大限にレーザー技術の恩恵を受けられるよう、安全体制の構築から、その後の運用までをトータルでサポートするソリューションをご提供しています。
導入前の安全コンサルティング
お客様の作業環境や用途をヒアリングし、関連法規に準拠した最適な管理区域のレイアウト、必要な保護具の選定、集塵機の設置方法など、具体的な安全体制の構築プランを無料でコンサルティングします。
ULT LASERの安全機能と付帯設備
私たちが提供するレーザークリーナー「ULT LASER」は、緊急停止スイッチやインターロック接続端子といった、JIS規格に準拠した安全機能を標準装備しています。
また、装置本体だけでなく、適切なレーザー保護メガネや、管理区域設定のための遮光カーテンといった付帯設備も、まとめてご提案・ご提供が可能です。
2年保証と全国対応のアフターフォロー
導入後の操作方法や安全に関するご質問はもちろん、万が一のトラブルにも迅速に対応します。
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レーザークラスに関するよくある質問
最後に、安全管理者の皆様から特によくいただく、具体的な質問にお答えします。
Q.作業に特別な資格は必要か
A. レーザー機器の操作自体に、フォークリフトのような国家免許は必要ありません。
しかし、労働安全衛生法では、危険性の高いレーザー業務に従事する作業者に対して「安全衛生のための特別教育」を実施することが事業者に義務付けられています。
また、社内規定として、この教育を修了した者のみが作業に従事できる、といったルールを定めることが推奨されます。
Q.保護メガネのOD値とは何か
A. OD値(Optical Density:光学濃度)とは、レーザー保護メガネが、どれだけレーザー光を減衰させられるかを示す指標です。
例えば「OD6」と表記されていれば、光の強さを100万分の1にまで弱めることができる、という意味になります。
必要なOD値は、使用するレーザーの出力や波長によって厳密に定められており、適合しない保護メガネを着用しても全く意味がありません。
どのOD値の保護メガネを選べば良いかわからない場合は、必ず専門家にご相談ください。
Q.作業者に特殊健康診断は必要か
A. 労働安全衛生法で直接的に義務付けられているわけではありませんが、厚生労働省の通達では、クラス3R以上のレーザー光線にさらされる可能性のある業務に従事する労働者に対して、雇い入れ時、配置換え時、およびその後6ヶ月以内ごとに1回、定期に、眼の検査を中心とした健康診断を行うことが強く推奨されています。
これは、包括的な安全管理プログラムの重要な一環です。
まとめ:安全対策の不安を解消し、安心して導入するために
今回は、レーザーの安全規格である「レーザークラス」について、その基本から、最も厳格な管理が求められる「クラス4」の具体的な安全対策までを網羅的に解説しました。
最後に、この記事の最も重要なポイントを振り返ります。
この記事の重要ポイント
- レーザークラスは、危険度を示す重要な安全基準であり、JIS規格で定められている。
- 業務用レーザークリーナーなどが該当するクラス4は最も危険なレベルであり、法律に基づく厳重な安全対策が必須。
- 具体的な対策には、管理者の選任、管理区域の設定、保護具の着用、特別教育など、多岐にわたる項目がある。
- 複雑な安全体制の構築は、自己解釈のリスクを避け、専門家へ相談することが最も確実な道である。
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