レーザー加工やクリーニングの導入を検討するとき、多くの人が最初に悩むのが「CWレーザーとパルスレーザーの違い」です。
どちらも“レーザー”という点では同じですが、仕組みや得意分野はまったく異なります。
その違いを理解しないまま導入を進めると、「思ったような仕上がりが得られない」「コストに見合わない」といった問題につながりかねません。
「厚板の切断にはどちらが向いているのか?」
「錆や塗膜の除去ならどちらを選ぶべきか?」
「自社の課題を解決できるのはCWなのか、それともパルスなのか?」
そんな疑問や不安を抱える方のために、本記事ではCWレーザーの特徴をパルスとの違いとあわせて解説します。
CWレーザーとパルスレーザーの決定的違い
まず、CWレーザーとはどのような技術か、そして最も比較対象となるパルスレーザーとは何が根本的に違うのかを解説します。この「違い」こそが、それぞれの「得意なこと」を決定づけています。
結論:エネルギーを「出し続ける」のがCWレーザー
CWレーザーの「CW」とは「Continuous Wave(連続波)」の略です。
その名の通り、レーザー光を途切れることなく、連続的に照射し続けるのが最大の特徴です。
パルスレーザーが、エネルギーを溜めてから「ごく短い時間」だけ爆発的に放出するのに対し、CWレーザーは、蛇口から水を出しっぱなしにするように、一定の力で安定したエネルギーを供給し続けます。
この「エネルギーを出し続ける」という特性が、CWレーザーの最大の強みであり、パルスレーザーとは全く異なる用途で活躍する理由です。
「総エネルギーのCW」と「ピークパワーのパルス」
両者の違いを理解する上で、最も重要なのが「平均出力(総エネルギー)」と「ピークパワー」という2つの指標です。
| パルスレーザー が得意なこと | エネルギーを時間的に圧縮することで、瞬間的に数千倍〜数万倍の「ピークパワー」を発生させます。 この瞬発力が、熱影響を抑えた微細な加工を可能にします。 |
|---|---|
| CWレーザー が得意なこと | 高い「平均出力」を維持し、単位時間あたりに巨大な総エネルギーを対象物に投入します。 この持続力が、厚い材料を溶かしたり、広範囲を高速で処理したりすることを可能にします。 |


一目でわかるパルスレーザーとの比較表
両者の違いを、以下の比較表で整理しましょう。
| 比較項目 | CW(連続波)レーザー | パルスレーザー |
|---|---|---|
| 光の出し方 | 連続的(常時ON) | 断続的(ON/OFFを繰り返す) |
| 重要な指標 | 平均出力(持続的な加熱力) | ピークパワー(瞬間の破壊力) |
| 熱影響 | 大きい(常に加熱し続ける) ※母材と機械の設定による | 小さい(熱が拡散する前に加工が終わる) ※母材と機械の設定による |
| クリーニング用途 | 広範囲の厚い錆・塗膜の高速除去 | ほとんどの材質に対応 ※ただし不得意な素材もあり |
CWレーザー導入のメリットとデメリット
この章では、CWレーザーを導入することで得られる具体的なメリットと、事前に考慮すべきデメリットを解説します。
スピードとパワー、コストで優れる2つのメリット
CWレーザーが選ばれる最大の理由は、その圧倒的な処理能力とコストパフォーマンスにあります。
メリット
- 高い平均出力による効率的な処理
- シンプルな構造による優れたコストパフォーマンス
- 深い溶け込みや熱処理への適性
1. 高い平均出力による効率的な処理
単位時間あたりに照射できる総エネルギー量が非常に大きいため、広範囲の厚い錆の除去、塗装剥離といった、パワーとスピードが求められる作業において、その特性を活かした効率的な処理が期待できます。
2. シンプルな構造による優れたコストパフォーマンス
連続的に光を出すCWレーザーは、光を高速でON/OFFさせるパルスレーザーに比べて、装置の構造が比較的シンプルです。
そのため、同程度の平均出力であれば、パルスレーザーよりも安価に導入できる傾向があり、コストパフォーマンスに優れています。
3. 深い溶け込みや熱処理への適性
連続的な熱エネルギーを供給できるため、金属の表面を改質する焼入れ(表面硬化)や、肉盛りを行うクラッディング、そして深い溶け込みが求められる溶接といった、熱を積極的に利用するアプリケーションで真価を発揮します。
導入前に知るべき2つのデメリット
CWレーザーは多くのメリットを持つ一方で、その特性に起因するデメリットも存在します。
導入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないために、以下の2つの点を必ず理解しておきましょう。
デメリット
- 熱影響(HAZ)が大きく、精密な仕上がりには注意が必要
- ピークパワーが低く、非熱的な加工は困難
1. 熱影響(HAZ)が大きく、精密な仕上がりには注意が必要
CWレーザー最大のデメリットは、熱影響域(HAZ:Heat Affected Zone)が大きいことです。
※ただし、母材・付着物の厚み等によります。
エネルギーを連続的に照射し続けるため、レーザーが当たった部分以外にも熱が伝わり、母材に歪み、焼け、溶融、あるいは材質の変化を引き起こす可能性があります。
そのため、熱によるダメージを嫌う薄板への照射や、マイクロメートル単位の精度が求められる仕上がりには、パルスレーザーの方が適していると言えるでしょう。
2. ピークパワーが低く、非熱的な加工は困難
CWレーザーは高い平均出力を持ちますが、パルスレーザーのような瞬間的に突出したピークパワーはありません。
そのため、熱で溶かすのではなく、瞬発的なエネルギーで材料を蒸発・飛散させる「非熱的な加工(アブレーション)」は困難です。
また、銅や金といった反射率の高い材料に対しては、初期のエネルギーを弾いてしまい、加工が難しい場合があります。
CWレーザーの主な用途と応用例
CWレーザーの「スピードとパワー」という特性は、様々な産業分野で活用され、大規模なものづくりを支えています。
厚板の切断・深溶込み溶接
数ミリから数センチにも及ぶ厚い鋼板を高速で切断したり、自動車のフレームや造船といった分野で、深い溶け込みを持つ強固な溶接を行ったりする用途で広く使われています。
これらは、CWレーザーの総エネルギー量の大きさなしには実現できません。
焼入れ・クラッディング
金属部品の表面にレーザーを照射し、急速に加熱・冷却することで、表面の硬度を上げる「レーザー焼入れ」。
あるいは、母材の表面に別の金属粉末を吹き付け、レーザーで溶かして肉盛りする「レーザークラッディング(レーザー肉盛り)」。
どちらも、CWレーザーの安定した熱供給能力を活かした代表的な熱処理技術です。
スピード重視のレーザークリーニング
そして、このハイパワーという特性は、「スピード」が最優先される特定のレーザークリーニング用途でも効果を発揮します。
橋梁や船舶、プラント設備に発生した、広範囲にわたる分厚い錆や塗膜を、とにかく速く除去したい場合には、CWレーザーが非常に有効な選択肢となります。
レーザークリーニングにおけるCWとパルスの最適な使い分け
CWレーザーとパルスレーザーの特性の違いは、特に「レーザークリーニング」という用途において、明確な使い分けとなって現れます。
どちらか一方が優れているわけではなく、除去したい対象と母材、そして求める作業効率によって、最適な選択は異なります。
CWレーザーが最適なクリーニング用途
CWレーザーは、その高い平均出力とコストパフォーマンスから、「スピード」と「パワー」が求められる以下のような作業で真価を発揮します。
- 広範囲の厚い錆やスケールの除去: 橋梁やプラント、大型機械の分厚い錆など。
- 大面積の下地処理: 広範囲の塗装を剥離するなど、とにかく処理速度を重視する場合。
- 母材が厚く、熱影響を許容できる対象物
パルスレーザーが最適なクリーニング用途
一方、パルスレーザーは、その低い熱影響と高いピークパワーから、「品質」と「精度」が求められる以下のような作業で真価を発揮します。
- 薄板の錆取り・塗装剥離: 熱による歪みを発生させたくない自動車のボディなど。
- 精密金型の洗浄: 母材に一切ダメージを与えずに、微細な汚れを除去したい場合。
- 高品質な仕上がりが求められる塗装前の下地処理
自社の課題に最適なレーザー方式を選ぶために

CWとパルス、それぞれの得意分野をご理解いただけたかと思います。
では、あなたの会社の課題を解決するためには、最終的にどう判断すれば良いのでしょうか。
ここでは、失敗しないための具体的なステップを解説します。
まずは除去したい対象と目的を明確にする
最適なレーザーを選ぶための最初の、そして最も重要なステップは、あなた自身の課題を整理することです。
- 除去したいものは何か?(薄い錆か、厚い塗膜か?)
- 母材は何か?(熱に弱い薄板か、頑丈な厚板か?)
- 最も重視するものは何か?(最高の仕上がり品質か、圧倒的な作業スピードか?)
これらの問いに答えることで、選ぶべきレーザーの方向性が見えてきます。
専門家によるデモテストで効果を確認する
カタログスペックだけでは、実際の効果は分かりません。
必ず、あなたの会社が実際に除去したいワーク(対象物)を使って、テスト照射やデモンストレーションを行いましょう。
パルスとCWの両方でテストを行い、仕上がり品質、作業スピード、母材への影響をあなた自身の目で比較・確認することが、投資の失敗を避けるための最も確実な方法です。
CW・パルス双方を扱う専門メーカーに相談する
「自社の場合はどちらが合うのか、専門家の意見が聞きたい」
「パルスとCW、両方のデモを一度に試してみたい」
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まとめ:CWとパルスの特性を理解し、最適な一台を選ぶ
今回は、CWレーザーについて、その原理からパルスレーザーとの決定的な違い、そしてレーザークリーニングにおける最適な使い分けまでを網羅的に解説しました。
この記事のチェックポイント
- CWレーザーは、エネルギーを連続的に出し続ける技術であり、スピードとパワーに優れる。
- パルスレーザーとは得意なことが全く異なり、「パワー・スピードのCW」と「品質・精度のパルス」が、基本的な使い分けの考え方。
- 特にレーザークリーニングにおいては、除去対象と母材、求める効率によって最適な方式は異なる。
- 最適な一台を選ぶためには、自社の課題を明確にし、両方の方式をテストできる専門家へ相談することが最も重要。
最適なレーザーを選定することは、設備投資の成功を左右する最も重要なプロセスです。
偏った情報に惑わされず、あなたの課題に真摯に向き合ってくれるパートナーを選んでください。
あなたの課題解決に、CWとパルス、どちらが最適か。
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